「……ねぇ、川上さん?」
「寝るから話しかけないで」
「どうしたの、急に。
そんな怒って」
「怒ってない、私に触るな」
そんな風に優しく頭を撫でてきて。
誰にでもそうするくせに。
「理由を言ってくれないと俺に伝わらないよ」
「……言いたくない」
正直に話せば、瀬野の嬉しそうな表情なんて簡単に想像がつく。
「じゃあ勝手に思い込んでもいい?」
「……何を」
「川上さんが俺に揺れてくれてるんじゃないかなってこと」
「…っ、な、何言って…!」
さすがの私も無視はできず、勢いよく起き上がる。
瀬野はベッドのそばで腰を下ろし、私を見て微笑んでいた。
その余裕そうな表情、本当にムカつく。
「合ってるよね、川上さん」
「う、うるさい…!あんたに揺れるとか死んでもありえないから!」
「ふは、必死だ」
「……っ、あーもう!離れてよ!本当にさっきから気持ち悪…きゃっ!?」
とにかく瀬野と物理的な距離をあけたかった私は、全体重をかけて突き放すように彼の両肩を押したけれど。
瀬野がその力に抗おうとせず、そのまま床に倒れ込んだ。
そのせいで前重心だった私もバランスを崩し、彼と一緒に倒れ込んでしまい、なんともダサい結果になってしまった。



