「じゃあ今日さ、俺がアジトに戻ってきた時、安心したような顔をしてたのはどうして?」
「そ、れは…別に、裏切り者がいる場で過ごすのが怖かっただけであって…」
「上手いこと言うよね、川上さん。
ズルイなぁ」
口が裂けても言えない、聞けない。
莉乃ちゃんとの関係性なんて。
ふたりが一緒のところを見ると嫌な感情が湧き起こることも全部。
「事実しか言ってない」
「俺の欲しい言葉はそれじゃないんだよ」
「…っ、触るな…」
頬を撫でてきたため、咄嗟に『触るな』と言いかけたけれど。
無理矢理とはいえ今日は許可してしまったのだ、変に抵抗ができない。
「あ、大人しくなった」
「…うるさい」
嬉しそうな声を上げる瀬野に言い返し、私は俯いた。
「ねぇ、キスしていい?」
「朝したでしょ。もう無理」
「えー、ケチだなぁ」
「頬を突っつくな」
「お願い、川上さん」
「絶対に嫌。嫌って言ったらやめる約束でしょ」
約束を忘れたなんて言わせない。
「そうだけどさ…俺たちあと3日しかないんだよ」
「何が3日?」
「こうして一緒にいられるの。
あと3日で学校が始まるから」
決して忘れていたわけじゃないけれど。
瀬野が口にしたことにより、改めて別れが近いのだと気づかされる。



