愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜




瀬野が戻って来たようだ。


なんとなく視線をそこに向けたくないと思っていると───


「あれ、涼ちゃん!莉乃ちゃんは!?」

光希くんの驚いた声が地下室に響いた。
その言い方から、どうやら莉乃ちゃんはいないようで。


ゆっくりと顔を上げれば、本当に瀬野しかいなかった。

思わず安心してしまう自分がいて。
慌ててこれは安心感ではないと自分の中で否定する。


「莉乃には帰ってもらったよ」
「へぇ、莉乃のことだから来るだろって言ってたんだ」


それは光希くんだけでなく、幹部の全員が驚いたようで。

陽翔くんも先ほどのやりとりを瀬野に説明していた。



「まあ結構駄々こねられたけどね」

「だろうな。それでも瀬野が連れてこなかったなんて珍しい」

「今の俺は川上さん第一だから」
「やだ涼ちゃん男前ー!いま好感度上がったよ!」


瀬野の行動に、見直したとでも言いたげな3人。


「じゃあ川上さん、行こう」
「は?もう帰るのかよ涼介」

「みんな川上さんを守ってくれてありがとう」

「本当に感謝してるなら、まだここにいてもいいじゃんか!愛佳ちゃんを独り占めするな!」


すぐ帰ろうとする瀬野に反対する陽翔くんと光希くん。

けれど瀬野はそれを聞こうとせず、私の腕を引いてきた。