愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜




ご飯を食べ終えた後もあの奥の部屋には戻らず、大きな部屋の寛ぎスペースで私たちは過ごしていた。


不思議と時間が早く感じて。

瀬野から“そっちに向かうね”と連絡が来た時、正直もうそんな時間かと思ったほどだ。


「あっ、涼ちゃんから連絡きた?」
「うん、今きたところだよ」

「あーあ、せっかく楽しかったのになぁ…また来てね愛佳ちゃん」

「また来ていいの?嬉しいなぁ」


なんて口ではそのように言うけれど、快くまた来たいとは思わない。

やっぱり“裏切り者”という存在が気になって仕方がないのだ。


「でも涼ちゃん、また莉乃ちゃん連れてくるんだろうなぁ。本当に嫌だ」

「瀬野のことだ、恐らくそうだろう」


光希くんと悠真くんがため息を吐く。
どうやら莉乃ちゃんもここに戻ってくるようだ。


そう考えると、少しばかり気が重くなる。

別にふたりがどうであれ、私には関係ないというのに。



どうしてもふたりのことが頭に過ぎってしまう自分が嫌になる。

何度か首を横に振り、忘れることにした。


「涼介さん!」
「お帰りなさい!」


その後も幹部のみんなと寛ぎスペースで待っていると、扉の開く音がした。