「仁蘭の仲間は全員、涼ちゃんに救われてる。
あっ、もちろん前の総長にもね」
前の総長、とは風雅さんのことだろう。
けれど私は説明するのが面倒なため、あえて知らないフリをする。
「涼ちゃんすごいんだよ。ちゃんと仲間一人一人の顔も名前も覚えてるし、全員に優しいし。
一応幹部と下っ端って分けられてはいるけど、分け隔てなくみんなと話してる。そんな涼ちゃんを僕は尊敬してるけど…けど、今は嫌いだ!」
「えっ…どうして?」
「涼ちゃんの唯一嫌いなところは莉乃ちゃん優先なところ!今日だってそう!愛佳ちゃんをここに置いてまで…」
最初は瀬野を褒めていてすごく良かったけれど、また始まる瀬野の愚痴。
どうやら光希くんは、莉乃ちゃんのことが大嫌いな様子。
「ほら光希、川上さんも困ってるだろ」
「愛佳ちゃんも嫌じゃないの?
莉乃ちゃんに涼ちゃんを盗られて…!」
陽翔くんが間に入ってくれたけれど、難しい質問をされてしまう。
正直、嫌だなって思った自分がいたけれど。
あまりにも瀬野との時間が長くなってしまい、感覚が麻痺したと思うことにしたのだ。
「私は大丈夫だよ。それに瀬野くんも莉乃ちゃんのことが大切だと思うから…」
「もっとわがままになっていいんだよ!
涼ちゃんは絶対に誰にも渡さないって!」
そこまでしたら、何だか必死で瀬野を自分の元に止めようとしているみたいで嫌だ。



