「えっと、あの…悠真、さんは…」
「敬語じゃなくていい。俺たちは瀬野とタメだから」
「あっ、じゃあ悠真くん、は…知ってるの?」
真面目な彼は、そのようなことも気にするタイプの人らしい。
なるほど、一番話が通じそうだ。
ここは嫌われないように注意しないと。
「いや悪い、俺も知らない。
でもやけに大事にしてるのはわかる」
「あれ本当ウザいよね、いっつも莉乃ちゃんの味方ばっか」
「だー!また負けた!
本当に翼、強すぎんだよ!」
「はるぽん、うるさい」
「そっちだってまた莉乃の話だろ?
涼介が気に入ってる、それでいいじゃん」
陽翔という男が床に転び、声を上げる。
“瀬野のお気に入り”
わかっていたけれど、少し胸が締め付けられるような感覚に陥る。
「そんなわけないじゃん、涼ちゃんの本命は愛佳ちゃんなのに!本当にはるぽんって最低!そんなんだから女に捨てられるんだよ!」
「な、なんでそんな光希が怒るんだよ…涼介だって男なんだから、ふたりの女を気に入ったっていいだろ」
「その考えがおかしいんだよ!もー、気にしないでね愛佳ちゃん。本当に気に入ってるんなら今頃彼女にしてるはずだから」
「…うん、大丈夫」
平気なフリをして笑う。
というか、“フリ”ってなんだ。
普通に笑えて当然のことなのに。



