愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜




「へぇ、意外とお子様口?」

「……ふは、酷いこと言うね。
たまに食べたくならない?」

「まあ、そうかも…」


乾いた笑い声だった。
少し違和感を覚えるけれど、あえて触れずにいく。


「じゃあカレーね。
帰りにスーパー寄ってね」

「うん、わかった。
やっぱり夫婦みたいだね俺たち」

「うるさい、夫婦って言うな。
バカじゃないの?」


違和感を覚えた私だったけれど、瀬野はすぐいつもの笑顔へと戻った。

本人が話そうとしないのなら、私から聞くこともないだろうと思い、いつもの調子で言葉を返す。


そうしているうちに、またあの大きな扉が見えてきた。

以前とは違うふたりが門番をしていた。


ふたりは総長である瀬野に大きな声で挨拶をして、扉を開ける。

地下室の中に入ると、以前来た時より人が少なかった。


今日は地下室の奥にある寛ぎスペースに幹部のみんなはいない。


「涼介さん、皆さん奥の部屋にいます」
「うん、ありがとう」


金髪の男に話しかけられた瀬野は、笑顔でそう返した。

すると金髪の男は嬉しそうな表情へと変わる。
本当に瀬野を尊敬しているようだ。