愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜







アジトに行くのはこれで2回目。
再び地下の通りを歩いて向かう。


「私はどれぐらいアジトに居たらいいの」

「なるべく早く帰れるようにするよ。
川上さんとの時間が惜しいから」


そんなこと言って。
どうせ結構な時間、そこに居なければならないはずだ。


「はぁ、本当に面倒くさい」
「無理して表の自分を演じなくていいんだよ」

「今更でしょ」
「大丈夫だと思うけどな」


そんな軽いこと言って。
もし警戒されてしまったらどうするのだ。


「それで?夜ご飯はどうするの?」
「もちろん家で食べるよ。川上さんとふたりで」

「別に食べてきてもいいけど」
「絶対に嫌だ、川上さんとの時間が減るなんて」


頑なにそれを拒否する瀬野。
その言葉、不思議と悪い気がしない。



「仕方ないからリクエスト受け付けてあげる、何食べたい?」

「えっ、いいの?どうしよう、どうせなら川上さんと一緒に作りたいな」

「私はなんでもいいけど」
「本当に?じゃあ…」


瀬野は少しの間考えた後。


「……カレーが食べたい」

ふと定番の料理を口にした。
どうしてか、瀬野の表情が暗くなった気がする。