愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜




「ふーん、そう」


興味のないフリをして。
じゃあまだこのままでもいいのではないかと思ってしまう。

なんだかそれが悔しい。


「もしかして、寂しい?」

「……はぁ?そんなわけないでしょ、むしろここ最近瀬野と一緒にいてばかりだから嬉しいぐら…っ、何その顔は」

「んー?必死になってかわいいなって」
「ば、バカじゃないの!?笑うな!」


誰が寂しいと思うか。
必死で否定するけれど、瀬野は頬を緩めるばかり。


「じゃあ今日、帰ってきたらたくさんかわいがってあげるからね」

「……別にいらない」

「今日の夜は川上さんに触れてもいい?
川上さんの許可があればいいんだよね」

「絶対にダメ」
「肯定するまで離さないよ」


本当にズルイ男。
また私を抱きしめて、離そうとしない。


「あーもう、本当にうざい!わかったから!
その代わり私がやめてって言ったらやめてよね」

「よし、じゃあ決まりだね。
今日の楽しみが増えたなぁ」


けれど私が肯定したらすぐに離してきたのだから、本当にタチの悪い。

一度ため息を吐いてからようやく家を出る。
いつもと同じでバイクに乗り、アジトへ向かった。