「丁度新しい歯ブラシ買ってるから、それ使って」
「……ごめん、迷惑かけてばっかだよね。
日用品ぐらい家から持って来とけばよかった」
追い出されたと言うのなら、きっとそれらを準備する間もなかったのだろう。
「いいよいいよ、歯ブラシなんて安物だし」
そう言って瀬野に歯ブラシを受け取ってもらい、先に磨いてもらう。
その間に私は寝る準備を始めた。
ベッドのシーツや布団を整える。
枕の位置も真ん中に置いて完璧だ。
それから少し経って瀬野が洗面所から戻ってくる。
「あ、終わった?
じゃあ瀬野くんはベッドで寝てね」
「……川上さんは?」
「私はその辺で寝るから」
「いや、川上さんがベッドを使って?泊まらせてくれるだけでも十分すぎるくらいありがたいのに」
「いいから!
ちゃんとベッドで寝てね!」
半ば強引に、瀬野の返事を聞かずに洗面所へと逃げ込む。
暖房をガンガンにつけて寝ればいいのだ、風邪なんてひかないだろう。



