「……っ」

ぶわっと顔が熱くなる。
こんな不意打ちのキスをされるなんて聞いてない。


「俺は今、家の外に出てるからキスしてもいいよね」
「そ、んなの…本当にあんたってズルイ…」


多分、今の私の顔は赤いことだろう。
俯いて顔を隠そうとするけれど、相手にバレバレだ。


「これが俺だよ。
今回は油断した川上さんの負けだ」


嬉しそうな声。
悔しいけれど、その通りである。

外から入ってくる冷気が、熱を冷ましてくれるかのようで、ちょうどいいと思ってしまう。


「じゃあ行こうか、川上さ…」


それはほぼ無意識だった。
手を伸ばして、瀬野の袖を掴んだのは。

瀬野が少し目を見張ったのがわかる。


「……川上さん?」
「中、入って。こんな顔で出たくない」


なんて、ただの言い訳に過ぎないけれど。

瀬野だけでなく自分にもそう言い訳して、正面から彼の肩に頭を乗せた。


まるで抱きしめられるのを待っているかのような動作だ。


ガチャッと音が鳴り、ドアが閉まる。

外からの光が遮断され、薄暗い中で静かな空気がふたりの間を流れた。


「川上さん、これはどういうこと?」
「……女扱いに慣れてるあんたならわかるでしょ」

今の私が何をして欲しいのかってことぐらい。