「圧倒的不利な状況だからね。だからこそ敵は油断しているだろうし、そこから脱出して後ろから攻める…逆奇襲をかけるんだよ」


ゾクッとした。
瀬野は敵の動きを何手先まで読んでいるのだ。

あくまで自分たちが勝つつもりでいる。
勝つために考えを巡らせているのだ。


「本当に瀬野って怖い」
「川上さん、絶対言ったらダメだよ」

「わかってる。
言ったら自分が危険な目に遭いそうだからね」

「うん、やっぱり川上さんは良い子だ」
「さ、触るなって言ってるでしょ!」


ここ最近、瀬野の自制が緩くなってきている。
家でも簡単に触れてこようとするのだ。

今だって頭を触れようとしてきた。


「えー、頭を撫でようとしただけなのに…」

「ダメに決まってんでしょ。最初はそれも自制してたのに、ちょっと最近調子に乗りすぎなんじゃないの?」


さすがの私も黙ってられなくて、そこを指摘する。


「ごめんね。川上さんがかわいくて、つい触れたくなるんだ」

「本当に気持ち悪い」
「さすがの俺もそれは凹むなぁ」


眉を下げて、わざと悲しそうな表情をする。
こういうところ、タチが悪い。

落ち込んだフリをする瀬野を無視して、服を着替えるために洗面所へ行く。