「あれ、珍しく涼介くんが派手に落ち込んでるね」
「お、ほら涼介。きたぞ田中さんの料理!」

料理を作り終えた田中さんが私たちの元までやってきて、カウンターテーブルにパスタとピザ、それから小さな平皿を2枚渡された。


「わ、いい匂い…!」


出来立てのパスタとピザは、どちらも食欲をそそるような匂いだ。

落ち込む瀬野を無視して、早速いただくことにした。


「……ん、美味しいです…!」

風雅さんの推す理由がわかる。


「ほら、瀬野も食べないと私が全部食べるよ」

「……はぁ、本当に川上さんはかわいいなぁ。そんな美味しそうに食べて。見てるだけで胸がいっぱいだよ俺は、好きなだけ食べていいからね」

「は?」


いきなり何を言い出すんだ。
本当に今の瀬野は色々とおかしい、壊れている。


「確かに今のは、“は?”だな。
らしくねぇぞ涼介」

「俺は一生川上さんには敵わないんですよ、こんなかわいい顔をされたらたまらないなぁ…」


どこがだ。
いつも好き勝手迫ってるくせに。

絶対に瀬野の言葉になんか騙されてやらない。
敵わないのは私の方である。