風雅さんはそんな瀬野を見て目を丸くしたかと思えば───
「ははっ、そんな本気になるんじゃねぇよ。別に下心があって頭撫でてたわけじゃねぇから」
「それでもダメです、触らないでください」
その言葉を言うとしたら私ではないか?と思ったけれど、ここは何も言わずに黙っておく。
すると瀬野はため息を吐くなり、ようやく風雅さんの手を離して私の隣に座った。
「いやー、そうか。
実は涼介って嫉妬深いんだな?」
「…何笑ってるんですか」
「んー?涼介の親として嬉しいなぁって」
ニヤニヤ笑う風雅さんに対し、少し拗ねたような表情になる瀬野。
珍しい、瀬野にも到底敵わない相手がいるとは。
「……川上さん、今は俺を見ないでほしいな」
私の視線に気づいた瀬野が、拗ねているような、照れているようにも見えなくない表情でそう言ってきた。
「……いや、瀬野がそんな表情するの珍しいなって」
もう風雅さんにもバレていたようだし、いつもの調子で瀬野に接することにした。
「……なに、もう風雅さんにも裏見せたの」
「え、なんでため息吐くの」
どうしてか、瀬野はため息を吐いた。
なんだか嫌そうに見える。
「俺でも時間要したのに、なんで風雅さんはこんなすぐに…」
「あー、たかだかそんなことで比べんなよ。
嫉妬深いと嫌われるぞ」
「元々川上さんに好かれてないんで大丈夫です」
「そんなヤケになんなって」
本当にどうした、今の瀬野は。
いつものように余裕たっぷりで、ニコニコ笑っている彼の姿はない。
まるで酔っているようだ。



