それに比べると風雅さんの反応は何万倍もマシである。
「それにしてもうまいなぁ、表情の作り方。でも常に冷静かと思いきや…案外純粋か、これは初めて見るな」
うんうんと頷く風雅さんに少し警戒するけれど。
「いや、楽にしてくれていいから。俺は川上さんの一番気楽な状態で接してくれたらそれでいい。なんなら敬語をなくしてくれても大丈夫」
「い、いや…それは」
さすがにそこまで舐めた態度をとるような人間ではない。
目上の人にはきちんと敬う心を持っている。
「まあ別に俺に対しては好きなように接してくれていいから」
良い人、なのだろうか。
瀬野みたいに意地悪で最低人間ではないかと警戒心を抱いてしまう。
「いやー、でも涼介から一方的に迫るなんてやっぱり意外だな。いつも女からベタベタしてる感じだったし。あいつ相当なやり手だから」
知ってる。
私もそんな瀬野に流されてしまい、いつもキスまで持っていかれるのだ。
それに昨日はいつものキス以上の───
「…っ」
また思い出してしまう自分が嫌で、咄嗟に額を机にぶつける。
ガンッと鈍い音が響き、結構な痛みが走る。



