「あれ、知らなかった?」
知らなかったというか、瀬野の髪をじっくり見るほど興味なんてなかった。
「うん…びっくりした。
でも瀬野くんの黒髪って絶対かっこいいよね」
顔がいいのだから何をしても似合うだろう。
当たり障りのないことを言っておく。
すっかり涙は収まっていた。
肩甲骨に到達するくらいの髪は、少し乾くのに時間がかかって。
「ごめんね、乾かしてもらって」
「ううん、むしろこのくらいじゃ足りないくらいだよ。
他に何か手伝えることはある?」
「そこまで気を遣わなくても…あっ」
丁度そのタイミングで乾燥を終える音が聞こえてきた。
これで完全に洗濯が終了したのだ。
「そうだ、じゃあ洗濯物手伝ってもらってもいい?」
「もちろんだよ」
とはいえさすがに私の物を畳んだり干してもらうのは悪い。
「ワイシャツのアイロンがけをお願いしてもいいかな」
「アイロンがけだね、わかった」
快く了承してくれた瀬野。
まずはアイロンの用意をして、洗濯機から先にシャツを取り出し軽く伸ばす。
その後、瀬野にシャツをふたり分渡して、他の洗濯物を畳み始めた。



