愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜




「ねぇ川上さん」
「……なに」

「この後さ、家に帰ってから、俺の行きたいところに行ってもいい?」

「勝手に行けば?」
「川上さんにもついてきて欲しいな」


すぐに断ろうと思ったけれど、お墓参りについてきてくれた手前断れない。


「行きたいところって?」
「先輩が働いているバーだよ」

「えっ、あんた未成年飲酒…」

「それは絶対にないよ、まず先輩が許してくれないし。お酒以外にもあるし、料理もあるんだ」

「そ、そう…」


一瞬本気で驚いた。
私を未成年飲酒に誘うつもりかと考えてしまった程だ。


「今はまだ夕方前だし、空いてるからちょうど良いかなって。ご飯も朝以降食べてないし、そこの料理も美味しくて有名なんだよ」

「へぇ、じゃあ行く」
「ありがとう」


確かに朝以降何も食べていないため、お腹が空いてきた頃だ。


ついていくことを了承し、家へと向かう。

家に着いて荷物を置いてから、次の移動手段はバイクだった。


「じゃあこれ、ヘルメットね」
「……毎度毎度髪ボサボサになるから本当に嫌」

「これは許して欲しいな。駅から遠いから、バイクで行った方が早いんだよ」

「あっそ」


それ以上文句は言わず、ヘルメットを被る。

瀬野の後ろに座ると、いつものように彼の腰に絡み付いた。