事故に遭ったと聞いて、おばあちゃんと一緒に病院へ駆けつけた時、お父さんはすでに息を引き取っていた。

お母さんを庇うようにして轢かれ、即死だったようだ。


一方お母さんは朦朧とする意識の中で、必死で私に声をかけたのだ。

その直後、私が頷く前にお母さんは───


「……っ」

無意識のうちに胸元あたりの服をぎゅっと掴んでいた。

苦しかった。
また思い出して涙が出そうになった。


どうして今なの。


「……川上さん?」


瀬野が私を呼んだ。
ドライヤーを止めた。

どうして異変に気付いたの?


「どうしたの?」

必死で涙を堪えて。
瀬野からは私の表情が見えないというのに必死に笑って。


強くなるの、私は。
弱さなんて見せない。


「……綺麗な髪だね、染めないの?」

隠しきれた…のだろうか。
また瀬野が髪を乾かし始めた。


「うーん、別に染めるとか興味ないかな」
「そっかぁ…俺はもう黒髪卒業したよ」

「元々黒髪だったの?」


真面目な瀬野のことだ、てっきり地毛だと思っていた。