愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜




変に目立ってしまうより、大人しくしていた方が目立たなくて済むだろう。


「あ、大人しくなってくれた」
「……もういい」


これ以上手を振り払おうとせず、ふたり手を繋いだまま買い物が始まる。


「まずは日用品とお正月用品買うよ」

「なんか本当に夫婦みたい」
「黙っ…なんでもない」


危ない、また言い返してしまうところだった。
落ち着け私、ここは無理にでも笑顔を浮かべよう。


その調子を保ったまま、まずは二階の日用品売り場へ向かった。

そこで一通り買い物を済ませ、次は一階のお正月フェアのスペースでしめ飾り等のお正月用品を買う。


「ん、こんなものか。
あとは食材調達で…」


いつの間にか瀬野の手は離れていて、お互いに荷物を持っている状態へと変わる。


男女の買い物ということで“デート”と思われがちだが、今回は本当にデートの“デ”の文字すらないだろう。

むしろ瀬野の言う通り“夫婦”に見られているかもしれない。



「年越し蕎麦は食べるとして、おせちはどうする?」
「んー、そうだ。一緒に作ろう」

「一緒に?それは嫌」
「どうしてそんなこと言うの」

「別に作るにしても買ったもの詰めるだけだし、ふたりもいらない」


瀬野とふたりで作るのは、何かと危ない。
どさくさに紛れて何かされそうだ。