愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜







瀬野とふたり、次に向かったのは大きなショッピングモールで。

年末のこの時期は驚くほど混み合っている。


「川上さん、俺から絶対に離れないでね」
「わかってる。でもさすがに、ここでは大丈夫でしょ」


こんなにも人が多い中で拐われたとなれば大変なことになるだろう。

なんて、これが甘い考えなのだろうか。


「油断は禁物だよ。
手を繋いでもいいぐらい」

「それはあんたが繋ぎたいだけでしょ、絶対にいや…って、言った直後に繋がないで!」


気づけばいつもの調子に戻った瀬野。
そのせいで私までもがいつもの調子で言い返してしまう。


先ほどは瀬野に感謝して、少なからず好感度が上がったはずなのに。


「この方が安全だから」
「うまいこと言って、下心バレバレ」

「わかってるなら突っ込まないでよ」
「私は繋ぎたくないの!」


思わず大きめの声を出してしまったため、慌てて口を閉じる。

もし誰か知り合いに見られていたら終わりだ。
もう言い返すのはやめようと決める。