「川上さんって本当…」
「何か言った?」
「ううん、なんでもないよ」
そう言って瀬野は苦笑し、先を行く私についてきた。
墓地に着くなり両親の眠るお墓へと移動し、まずは綺麗にする。
花立てに先ほど買った花を入れれば終わりだ。
全体も鮮やかになった気がする。
それから両親に挨拶をするため、線香の準備をしてから手を合わせる。
なぜか瀬野も挨拶をしたいということで、一緒に手を合わせることにした。
いつもなら重い体を動かして手を合わせているのだが、今は不思議なほどに軽い。
「お墓参り、ついてきてくれてありがとう」
「ううん。むしろひとりで行きたかったはずなのに、俺がついてきてごめんね」
「…いや、今日は瀬野がついてきてくれて良かった」
最初は嫌だと思っていたけれど。
本当に不思議なものである。
「川上さんって急に素直になるから怖い」
「怖いって何」
「でもかわいいから良いか」
「…っ、かわいいは余計。買い物行くよ」
「あ、もしかして照れた?」
「う、うるさい…!早く行くよ!」
熱くなる顔を隠すようにして、瀬野の先を行く。
そんな私を見て瀬野が小さく笑ったような気がしたけれど、振り向こうとせずに駅へと目指した。



