愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜




「えーっ、川上さんにキスしたらダメ?」
「ダメ!」

「なら無理矢理するしか…」
「その思考、本当にやめてくれない?」


今までのキスが全部、同意じゃない無理矢理のもので。

あまりにも好き勝手やられすぎている。
結局は瀬野の力に敵わなくて、抵抗も虚しく終わるのだ。


本気で対策を考えないと。
流されないためにも。


「じゃあ家事は全部、お願いね。
私は準備をしとくから」

「ん、任せて」


キスの件はもちろん了承するはずがなく。
私は部屋へと戻る。

それから一通り準備を済ませ、年末年始に必要なものをスマホのメモに書き出しておく。


「……あっ」

その時、スマホを見て思い出した。
そうだ写真、昨日の写真を消してもらわないと。


「どうしたの?」

洗い物を終え、準備ができた様子の瀬野が私に声をかけてきた。


「瀬野、写真」
「え?」

「昨日の写真、消して」


ここは譲れないと思い、少しきつめの口調で言う。
睨む勢いで瀬野を見つめていると、彼は目を細めて笑った。

どういう表情だ、それは。


「さすがに俺もそこまでクズじゃないから、昨日のうちに消してるよ」

「……本当?」

「不安なら見る?俺のスマホ。翼にもかわいい川上さんを見られたくないから、すぐ消すよう命じたし」

「…っ、すぐ消すならどうして写真を転送してもらったの」


かわいいは余計だ。

それにすぐ消すのなら、転送してもらった意味がわからない。