けれど両親のお墓参りに行きたいのも確かで。
「別行動をしてまで、ひとりで行きたいところがあるの?」
「……うん」
「俺には言えない?」
「言えないわけじゃなくて…ただ他人に弱さを見せたくないだけ」
まだ強い心でお墓参りにはいけない。
行くたびに何か辛いことや寂しいことが脳裏をよぎってしまうのだ。
「じゃあ大丈夫だね」
「…は?」
「俺たちはただの“他人”じゃないよね」
「待って、そういうことじゃなくて」
意味合いが違う。
私は、私以外の誰にも弱さを見せたくないのだ。
「そういうことだよ。俺たちはもう、“他人”でも“クラスメイト”でもないと思うなぁ」
「他人だし、ただのクラスメイトだから」
「昨日あんなことまでしたのに?」
「…っ」
お願いだから昨日のことは触れないで。
もう忘れたいことなのに。
「すごくかわいかったなぁ…必死で俺に掴まって、耐えてる姿」
「お、思い出すな…!」
「顔を真っ赤にしながら息を乱して。ハマりそう」
「私はもう二度と御免だから!」
昨日は恐怖心を忘れさせてもらうために。
上書きしてもらうために瀬野を頼っただけ。
「でも俺、結構我慢した方なんだよ?
もっと先のこともしたかったのに…」
「それを当たり前って言うの。
付き合ってもないのにヤルなんてあり得ない」
口では強気だったけれど、昨日に戻ればどうなっていたか正直わからない。
本気で抱かれると思った。
心の中で覚悟していた自分もいて。



