愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜




とりあえず少し離れたショッピングモールに行けば、いつもより人が多い年末に同じ学校の生徒と会う確率は格段に減るだろう。

そこで早く買い物を済ませたとしても、それはそれで家での時間が増えてしまう。


「あっ、そうだ」

年末最後に両親のお墓参りにも行こう。
そう口にしかけたその時、思い止まった。


お墓参りに行って、自分を保てたことはない。
いつも弱さが勝ってしまい、泣くか滅入ってしまうのだ。

そのような弱い姿を瀬野に見せたくない。


「どうしたの?」

「やっぱなんでもない。
最初だけ別行動するよ」


ここは上手く言って別行動を取ろう。
そう思ったけれど。


「それはダメだよ、川上さん」


瀬野の口からは拒否の言葉。

素直に頷かれると思っていたものだから、少し驚いてしまう。


「どうしてダメなの?」

「昨日のこと、まさか忘れたとは言わせないよ。
今、川上さんがひとりで行動するのは危ない」


それは真剣な表情だった。
さすがの私もこれには受け入れるしかない。