いつも寝る時は瀬野が先にベッドへと入っていたけれど、今日は私が先に入っている。

そのため退いた方がいいなと思ったけれど───



「…っ」


その考えとは裏腹に、身体はそれを拒否していて。
瀬野が私に近づいただけで、今日のことが脳裏をよぎったのだ。


「……ごめん、川上さん」
「な、にが…」

「俺、欲しがりすぎて自分の気持ちばかり優先してた。少しやりすぎちゃったよね、もっと早くに助けるべきだった」


今更反省されても過ぎた話だ、過去には戻れない。


「別に、私は大丈夫…」

ここにきてまだ強気の姿勢を見せてしまう。
本当は今もまだ、思い出すだけで怖いというのに。


「今日、俺は床で寝るね」
「……え」

「そっちの方が川上さんも落ち着いて寝れるだろうから」


瀬野が申し訳なさそうに笑うのが見えた。
そして私から離れようとする瀬野を───


咄嗟に引き止めた。
無意識のうちに、瀬野の服を掴んでいたのだ。


「……川上さん?」
「…っ、なんで」


どうして瀬野が遠ざかることに不安を覚えるのだろう。

この手を離したくないと思ってしまう。