ようやくひとりの空間になる。


「はぁ…」

息を吐いて表情を作ることをやめた。
無表情、これが一番楽である。


「そういえば、寝る時どうしよう…」

ベッドひとつあるだけで、ソファもなければ敷布団ひとつない。


つまりベッドで寝る他ないのである。
夏の薄手の布団なら押入れにあるのだが、それでも寒いだろう。

まあ私がたくさん着込んで床で寝たらいいか。
瀬野はベッドで寝てもらおう。


洗い物を終え、押入れから夏用の布団を取り出した。

丁度それと同じタイミングで洗面所のドアが開き、瀬野がお風呂を入り終えたのだとわかった。


「着替えまでありがとう」

そう言って部屋に戻ってきた瀬野の髪は濡れており、不覚にもドキッとした。