「……待って」
なぜか瀬野に腕を掴まれてしまう。
男らしい大きな手は、私の動きを簡単に封じてしまう。
やっぱり人気者で誰にでも優しい彼も、男の人なのだと思わされた。
「どうしたの?」
「どこ行くの…?」
少しだけ寂しそうに揺らぐ瞳。
まるで捨てられた子犬のようだ。
こんな表情、初めて見た。
今日は彼の新しい一面を見る日になるのだろうか。
「着替えてご飯作ろうかなって」
「……ご飯」
「瀬野くんはテレビでも観て待ってて?」
「いや、でも泊まらせてもらってる側だし俺も…」
「大丈夫!
瀬野くんはお客様なんだから!」
最後まで笑顔を崩さずに、部屋に置いてある着替えを持ってまずは洗面所へと向かった。
そういえば、瀬野の着替えをどうしようか。
ふと着替えながら思った。
私の服はサイズ的に無理だし、制服のまま寝るとなればシワになってしまう。



