「……あれ、俺…あっ」


一瞬だけ状況を読めなかったようで、戸惑いの声が聞こえてきたけれど。

賢い瀬野はすぐに今の状況を飲み込めたようだ。



「川上さん、寝てる?」

ピクリと反応しそうになったけれど我慢する。
もしばれたら『どうして寝たフリなんか』と迫られそうだ。

それに体を瀬野の方へ向けている時点で怪しまれそうである。


「すごくのんびりした時間だなぁ」


触れるなって言っているのに。
瀬野は手を伸ばして私の頭を撫でてきた。

寝ているフリをしているため、何もできないけれど。


「ふっ、かわいい。
相変わらず無防備だね」

今度は頬をふにふに触り、微笑んでいる様子。
私が起きていると気付いていないのだろうか。


「こんな姿、俺以外には見せないでね」


その一言と共に瀬野は私を抱き寄せる。
胸元に寄せられた私は、まだ動けそうにない。

頭を撫でながら私を優しく抱きしめて。
あまりの優しい手つきに、再び眠気が訪れてくる。