「何もしなくていい夜は欲しくないの?」
「……欲しいって思うようになった、川上さんの家に泊まらせてもらってから。朝起きたらすごく楽だったし、びっくりするほどよく眠れたんだ」
あの日のことを思い出したのか、顔を綻ばせる瀬野。
その姿に心揺れた私は意志薄弱なのだろうか。
「じゃあ冬休みの間だけ」
「……え」
「冬休みの期間だけ、家に置いてあげてもいいよ。それだとせっかくの休みが休みじゃなくなるでしょ」
ああ、自分は何言っているんだとわかっていても。
瀬野を引き止めずにはいられなかった。
私なんかよりも彼が驚いていたけれど。
「……川上さん」
「なに」
「自分が何言ってるかわかってる?」
「わかってるよ。その代わり安くないから。夜はゆっくり寝かせてあげるけど、家事とかちゃんと手伝ってもらうよ」
「…それだけで家に置いてくれるの?」
「だから冬休みの間だけね」
そう、冬休みの間だけだと。
一日中好きでもない女の人と恋人のように過ごすのは、さすがに心身ともに疲れるだろう。
「本当にいいの?
川上さんは後悔しない?」
「後悔はするかもね。
でも今の瀬野を見たらなんか放っておけない」
本当にバカみたい。
自分でも思うけれど。



