「この後はどうしようか。
時間も時間だし、またホテルでも泊まろっか」


その言葉にドキリとする。

“ホテル”しか言われていないのに、変なことを想像してしまう私も私。


「か、帰るよ私は…!」
「えー、そんなこと言わないでよ」


少し残念そうにする瀬野に、もう恐怖心は抱かない。

いつもの彼に戻ったようだ。


もしここで私が断ったら。

瀬野はまた女の人の所に泊まって、“そういうこと”をするのだろうか。


「今日は泊まらせてもらえないの?」
「んー、多分いけるんだけど…今日は疲れたなぁって」


それでも家に帰る選択を取らない瀬野に、少しだけ自分と近いものを感じてしてしまう自分がいて。

私も叔母さんの家に住まわせてもらっていた時、なるべく家に帰りたくないという気持ちだった。


リビングには必要最低限しか行きたくないと思っていたから、ずっと部屋に篭っていた。

瀬野も同じ気持ちなのだろうか。


「だから川上さんも一緒に泊まってよ」
「……ホテルは嫌」

「えっ?」
「ホテルは絶対に嫌」


前みたいに手を出されるかもしれないし、瀬野にとって有利な方向に持っていかれることだろう。

それだけは避けたい。


「川上さん…?」
「手を出さない保証は?」

「…え」
「私に手を出さない保証、ある?」


睨むように瀬野を見つめて答えを待つけれど。
少し戸惑っている様子。