胸にときめきを走らせたまま、
次の日の学校。

昨日友達になったからといって、
馴れ馴れしく話せるわけではない。


というか、


話してくれるかわからない。


もしかしたら、友達だって思ってるのは
オレだけなのかもしれない。

向こうはそれほど
大した友達とは思ってないはず。


そんなことを勝手にあれこれ考えては
勝手に落ち込みながら登校する。


狭い路地、今日は佐野原くんの姿を見ながら
下校できるかな。


それだけで今日一日、幸せな気がする。


無理やり胸を躍らせながら
いつもの路地を歩く。


すると、すぐ後ろから
踵を引きずるような大きくて雑な足音がした。




「おはよ」




鼓膜にその低い声が届いた時、
瞬時に心臓へと電流が走った。


振り返ると、肩のすぐ隣まで来ていた
佐野原くんの姿があった。




「お、おはよ」




驚きと動揺を隠しながらも、
しっかりと挨拶を返し
そのまま引きつった笑みを見せた。




「お前こっち方面やってんなぁ」


「あ…う、うん…実は」


「じゃ何回か会うてたかもなww」


「せ、せやな」




いつも後ろから見てたけどな。


というより、これは
一緒に登校しているのか?


えっ、もうそんなに親しくしていいもんなん?


平然を装っていても
頭の中では動揺と混乱が渦を巻いている。




「…ていうか、」


「えっ」




そんなオレの状況も知らず
容赦無く佐野原くんは話しかけてきた。




「橋本って結構イケメンよな」


「へっ!?うぇっ!?」




あかん、変な声出た。




「いや反応のクセ強すぎやってwww」


「や、いやあのっ…」




堪えきれなかった動揺に
吹き出して止まらない佐野原くん。

そんな彼さえも、
すべてがかっこよく見える。




「いやまじwwお前おもろいww」


「そっ…そ、そう…か?」




オレのことでそんなに笑ってもらえるなんて、
なんだかとても嬉しくなって、

もしバカにされていたとしても
それでも嬉しくって、

オレも自然と笑顔になれた。




「ほんま、俺お前のことかなり好きやで?ww」


「え、」




いま、なんて?