予行練習も終わり、
それぞれのクラスごとに教室へ戻った。

HRの最中、いつもぼんやりと頬杖ついているオレは
頭の中で今日見たあの人の姿を浮かべる。




かっこいい。

かっこいい。

かっこいい。




でも、実際目の前にいたら
話せんのやろうな。

ちょっと怖そうで苦手なタイプなのに、
なんでこんなにも好きなんやろ。




そんなことばかり考える。




HR終了のチャイムが鳴り、
気づけばクラスメイトは既に立ち上がっていた。
今日は放課後練習は無いようだ。



やばい、早く帰らんと
あの人帰ってまうーーーー



「橋本!」


「えっ」


「悪いんやけど、これ資料室に戻しといてくれるか?」


「あー…」




教室から出遅れた運の悪いオレ。
担任のロックオンは早かった。




ドサッ




「すまんなぁ、頼むなぁ」




大量の教材を抱えたオレの頭をわしゃわしゃと撫でて
そのまま教室を後にした担任に
見えないところで舌を出し悪態をついといた。




「おっも…」




手がジンジンしてきた。

資料室までの廊下を一人歩いてると、
後ろから騒がしい声と数人の足音が響き渡り
怯えたオレは俯き気味に壁際に避けて
足音が通過するのを待った。




「つか、あの子体操服やと胸でかく見えへん!?」

「いやいやww普段からでけーやんww」

「普段から見とるとかお前らホンマきもいでww」

「お前も見とるやろ絶対ww」




そんな話をしながら真横を通る生徒たち。
同じ1年の上靴だ。


あぁ…もうそんな話してんだ…。

男だなぁ…。

オレ、クラスの女子全く興味ないわ…。





「この俺が見とるわけないやんけww アホかおまーーー」



ドンッ



「ぅ、わ」

「やば、」





ドサドサッ




背中からの衝撃で
痺れていた手から資料がバラバラと落ちる。

吃驚したオレは、すぐさましゃがみ
床に広がった資料をひとつひとつ重ねていった。




「おぉ…ごめん」


「や、大丈夫です」




頭上から降ってきた声に適当に返事していると、
その声の主が目の前にしゃがんだ。

思わず顔を上げると、そこには




「手伝おっか」


「……え、」





どうしよう。



やばい、どうしよう。







好きな人が、目の前にいる。