ナオくんの匂いに包まれた、
暗い部屋の中。

服が擦れる微かな音さえ聞こえるほど
無音の世界だった。

すぐそばに彼がいるだけで、
今、世界で二人だけしかいないような
心地良い錯覚を感じていた。





「ヒイロ……」


「………ん……」





名前を呼ばれる度に感じる
ナオくんからの深い愛情が
身に染みて擽ったい。

薄暗さに慣れた視界は
しっかりとナオくんの潤った瞳を見つめ、
次第に、瞼を閉じて真っ暗となった。



唇を吸い合う小さな音が
無音の部屋にこだまする。



せっかくこうして恋人になれたのに、
もう、しばらくは
ナオくんと会えなくなると思うと

胸が張り裂けそうだ。

こうして、キスしているのも
手を握り合うのも、

次はいつ出来るのかわからない。



寂しさを紛らわせるために、
オレは流れ落ちる涙を気にも止めず
ナオくんのくっきりとした柔らかい唇に
必死でくいついていた。

ナオくんはオレの涙を拭いながら、


「好きやで、ヒイロ」


と、目を見て囁いてくれる。

その度に、オレは安心して
ナオくんに身を任せられた。

いつまでもこうしていたい。


突然、体がすっと後ろへ倒れた。

体重をかける度に軋むベッドへ
彼は優しくオレの体を寝かせる。

いよいよ、鼓動が早くなってきた。



これから、ナオくんと
大好きな人と

やばいことするんだ。

だんだんとナオくんの顔が近づいてくると
心臓が胸から突き出そうなほど
激しく脈打つ。





「ヒイロさ…、」


「……?」





仰向けになったオレの上に
しっかり覆い被さったナオくんが

優しく微笑みながら問いかける。





「カラオケん時…一人でやった?」





思わず顔が熱くなる。
途中までしてしまっていた自分を
今更ながら後悔した。

あの時人が来なかったら、
最後までしていたかもしれない。

でも、躊躇していたのも事実だ。





「や、やって…ない…」


「ほんまかぁ…?
戻ってきた時…なんか顔エロかったで?」





意地悪な笑みを浮かべながら
頬から耳にかけて
しっとりと唇を這わしていく。

それに反応せざるを得ないオレの身体は
反射的に力が入って小刻みに跳ねた。





「が、我慢…した…」


「我慢…?」


「最後まで…してしまいそうやった…けど…っ」


「…うん」


「やっぱ…、ナオくんと…したかったから…」


「………そっか、」





すると、ナオくんはおもむろに
自分の上着を脱ぎ始めた。

軽くズボンに入れていた
シャツも引きちぎるかのように
ボタンを滑り外して腰元に下ろし

筋肉質の浅黒い上半身が露になる。





「な、ナオくん…?」


「俺もう、我慢できひん」


「ちょっ、」





彼はオレのシャツへ手をかけ、
ボタンを外すごとに
わざと大きな音を立てて
胸元へ唇と舌を這わせた。

まるでナメクジが歩いたように
しっとりと胸の中央から臍の方へ
温く濡れていく。

ナオくんの少し荒がった熱い吐息が
直接肌にかかって
余計にオレの神経を敏感にさせた。





「んっ……まっ、て…」


「肌きれー…めっちゃ白いやん…」


「そ、んな…そこで喋らんといて、あっ…」





変な声が出そうになるのを
手で抑えて堪えた。

微かに肌へ伝わる舌の感触が
焦れったくてこそばゆい。

それが果てしなく快感だった。





「声、…我慢せんでええから」


「やっ…無理やって…、恥ずい…」


「…俺も恥ずい、でも聴きたい…」





甘えたような切ない声を出して
オレの胸元に口付けをする。

すぐそばには、既に敏感に突起した
性感帯があった。

近くで舌を滑らせるもどかしさに
思わず声が上擦る。




「あ、ぁ…っ」


「………えろ…、」




声が漏れる度に
ナオくんは高揚してくれているようで、

足元に密着した彼の股間が
熱を帯びて大きくなっているのが分かる。

それに気づいた時には、
もう、理性なんて
互いにこれっぽっちも残っていなかった。




「乳首…めっちゃ勃ってる」


「なっ…ナオくんも…ここ…勃ってる…」


「………うるさい」




気に触ったのか、照れ隠しなのか
突如オレの乳首を覆うように唇で咥えこみ、
舌先で水音をいやらしくたてながら
何度も上下させて吸い付いてきた。




「あっ…は、ぅ…っ」


「気持ちいい…?」


「んっ……ぅ、ん…」


「…ちゃんと言わんと分からへん」


「き…、きもち、い…っ」




ナオくんが求めている言葉を零すと
彼の下半身が素直に喜んだ。

オレで興奮してくれていると思うと
本当に嬉しくて、
もっと喜ばせたくなってくる。





「ナオくん…、」


「…ん?」


「もっと…っ、して…?」


「っ…………」




彼は待ちわびていたと言わんばかりに
濃厚なディープキスを交わしながら
オレの股間へ手を伸ばした。

ベルトもファスナーも簡単に解いてしまい、
あっという間に足首まで
片手でずり下ろされてしまった。

じっとりと濡れた下着が露出すると、
ナオくんはそれを
ヌルヌルと指で弄りながら
硬くなった肉棒を上下になぞった。



「はっ、ぅ…んっ」



思わず身体が仰け反る。

先端に刺激が来る度に
腰が浮いてヒクヒクと何度も脈打っていく。



「………ぐちょぐちょやん…」


「んっ…も、やばい…っ」



涙を浮かべて
ナオくんの顔を見つめた。



「ナオくん…、お願いっ…」



もう、出したい。

震える先端が下着から突き出ていた。