『仰げば、尊し わが師の恩ーーー』



しんみりと歌声が響き渡る、
晴天の真昼なのに薄暗い体育館。

ゾロリと揃った父兄や教師たち。
そして、後輩である在校生。

これまで過ごしてきた高校生活を
ひとつひとつ思い出しては、
過ぎ去る日常が
いかに素晴らしいものだったか
深く、思い知らされる。




思えば、今まで生きてきた中で
一番濃い3年間やったな。




親に捨てられ
一人暮らしになり、

山下と同じクラスになって
友達になり、

ナオくんに片思いして
ようやく知り合い、

田口くんとも仲良くなって
4人で連み、




ナオくんに告白して、
初めての恋人ができーーーーー




なんだかんだ、
全て良い方向に向かっている気がする。

不安でしかなかった毎日は、
今では安らぎの日常に変わっていた。

周りのヒトに、恵まれてたんやなぁ。




あかん、泣きそう。




目の前に見えるステージと舞台装飾が
じわじわと滲んでいく。

同時に、鼻を啜る音や
女子生徒の泣き声が小さく聞こえてきた。




泣かへんって、思うてたのに。

色々思い出したら、やっぱり

全然あかんやん…オレ…







やっぱ

離れたくないよ、ナオくん。