♪♪♪〜
携帯が大きな音を立てて
ポケットの中で震えた。
張り詰めた緊張が一瞬で途切れて
あっさりと現実に戻っていく。
「………電話、」
「ご、ごめん…」
「…はよ出てやり」
「すぐ終わらすから…」
ナオくんはそっと体を離し、
オレの身を解放した。
まだ、触れられていたかったのに。
ちゃんと気持ち伝えたかった。
こんな時に…、一体誰やろ。
………あ。
お前かぁぁぁぁぁ………。
「…もしもし、山下?」
『なんやねんその嫌そうなテンションww』
「別に…で、なんの用…?」
『お!そうそう!
お前、明日の件聞いたか??』
電話の内容は
田口くんから誘われた件についてだった。
明日、いつもの4人で
卒業パーティーということで
繁華街に繰り出そうと。
田口くんはやっぱり、
みんなのことも誘ってたんやな。
なんだかんだ、
田口くんも少し寂しいのかもしれない。
と、電話をしている後ろで
ナオくんはいつの間にか
ポットの再熱ボタンを押して
キッチンにもたれながら
携帯をいじっていた。
ココアの準備、してくれてるんや。
早いとこ切り上げんと。
「その事、ナオくんは知ってんのん?」
『田口から連絡がいってると思うで。
まあ大丈夫やろ、お前も連絡してやってや』
「う、うん、わかった。
わざわざありがとな、早く休めよw
ほんだら、また明日」
『おう、明日!おやすみ!』
ーーーーーーピッ。
小さく溜息をついて
恐る恐る後ろを振り返る。
未だ携帯をいじっていたナオくんは
一瞬こちらを見て
「もうええのん?」
と、携帯をポケットにしまった。
「大丈夫…ごめん、ほんまに」
「ええよ、山下なんて?」
「あ…明日卒業式のあと、
みんなで遊びに行くって…知ってる?」
「……あぁ、なんか言うてたな」
「カラオケとか行くんかなぁ〜…」
「え、お前の歌気になるww」
そのまま明日の話になり、
思い思いに話し込んでいく。
さっきまでの二人に戻れるような
そんな空気が薄れてしまったから。
山下を責めてるわけじゃない。
仕方の無いこと。
でも、
気持ち、伝えたかったなあ。
