『…………やっと出た』





ナオくんの第一声は
怒っているというより、

とても悲しそうだった。





「…ごめん」


『……心配したわ』


「うん………ごめん…」






寒そうに鼻をすするナオくんの吐息とともに、
踵を引きずって砂利道を歩く音が聞こえてくる。






「…今、どこ?」


『たぶん、お前んとこの団地にある公園らへん』


「あ…迎えに行く」


『…おう』






ナオくんはすぐ近くまで来ていた。

ベランダから目の前に見える公園。

カーテンの隙間から覗いてみると、
街灯が光るだけの
暗くて誰もいない公園の中で
一人、滑り台に寄りかかり
携帯をいじっているナオくんの姿があった。



どれぐらい、あそこにいたんやろう。

肌寒い中、ひとりぼっちで。

オレがずっと電話に出なかったら…。



どんどん罪悪感が押し寄せてくる。
もっと早く電話に出てあげれば良かった。

いや、そもそもオレが
勝手に取り乱さんかったらこんなことには…。




そんなことを考えながら、
部屋に暖房を入れてポットのお湯を沸かし

上着を軽く羽織って
早足で家を出た。