長い、沈黙だった。

実際にはどれだけ黙っていたのか分からない。
ただ、怖いくらいに長く感じた。


オレが今ナオくんに言った言葉は、
ほとんど告白に近い。

顔をあげれば、ナオくんがどんな表情をして
オレの話を受け止めたのか
すぐに分かってしまう。


怖くて仕方がない。


ナオくんの言葉をじっと待つ時間は、
まだ春先なのに汗がどっと出てしまうような
緊張感と恐怖心に襲われる。


後悔した。


わざわざ自分から傷つきに行くなんて。
アホ以外のなんでもないやん。


聞かんかったらよかった。
怖い。


顔を、上げることが出来ない。


怖い。


小刻みに震えていると、
視界の端の方にいるナオくんが
一瞬揺れたと思いきや
静かにオレの目の前へ立った。




怖い。

何言われる?

怖い。

もう終わる?

断られる?

フられる?




ぎゅっと目をつぶって
オレは今のこの現実から逃げようとした。




「ヒイロ、」




オレを呼ぶ声に、一気に
現実へ引き戻された。

あかん、もう…

逃げられへん。






「…お前、女になりたいんか?」


「……ううん…」


「…じゃなんで、」


「オレは、」





もう、知らん。

どうなったって、いい。

そんな顔、されるくらいなら、もう。





「ナオくんが女好きなら、女になりたい」


「……それ、って……」


「オレが女になったら、付き合ってくれるん?」





そんなに目を見開いて、
眉間に皺を寄せて、

怪訝な表情。

いっそ、嫌われてやる。





「オレ…、ナオくんのこと、
ずっと好きやった。
親友としてやなく、男として」


「え、は?」




「………ナオくん、オレ、ゲイなんやで」




その言葉を最後に、
オレは路地裏をひとり

走り抜けた。