「お前、卒業式泣く?」


「いやーないなー」


「えー、薄情やな」


「じゃお前は泣くんかよ」


「泣くよ」


「泣くんかい」





下校途中。

適当に交わされる、
ナオくんと田口くんの会話。

卒業式前日とは思えないほど
呑気で平和な空気だ。



あれから、
俺とナオくんはいつも通り。

"友達同士"でいる。

あの時、ナオくんが言ってくれた
「好き」という気持ちは
きっと、友達としてのことで。

あんなに距離が近かったのも、
あんなに涙を流したのも、

全部、ナオくんにとって
必要な慰めだったからかもしれない。

友達として、
求めていた事だったのかもしれない。

無意識にそう思うようにしていた。




「佐野原、元気なってよかったな」




そう、オレに微笑みかけた山下。

あの一件の後、既にナオくん本人から
山下にも地元を離れることを告げられていた。




「そうやな、ほんま。
明日で最後やっちゅーのに」


「けっこー呑気なもんやなww」


「なww」




山下と笑い合っていると、
田口くんが突然こちらを振り返り
オレの隣へやってきた。




「ねえ、ヒイロさ、」


「え、なに」




急に距離が近くなったかと思うと、
ガシッと肩を組まれて
周りに聞こえないよう耳元でそっと囁いた。




『明日、佐野原に告るやろ?』


「ええっ!!!!」




思いもよらなかった発言に
大きな声で驚いてしまった。




「おい、何コソコソしとんや。
俺の悪口ちゃうやろなーww」


「ちが、ナオくんには何も関係なくって、」


「え! ほんなら俺のこと!?」


「山下でもなくって!!」




慌てふためいていると、
3人はオレの焦る姿を見て
面白そうに笑った。

満足気な田口くんは、
したり顔で"頑張れよ"と耳打ちして
背中をポンと叩き、
再びナオくんの隣へ戻った。



告白なんて、
考えてもなかった。



告白。



告白なんてしたら、
ナオくんとはもう
二度と遊べなくなるかも。



気持ち悪がられるかも。



でも、どうせ離れてしまうなら、
いっそ告白してしまった方が…。



でも、もし運良く
こんなオレを受け入れてくれたとしても

ずっと、遠距離。




どう転んでも、辛い道しかない。




どうしよう、オレ。








「どぉぉぉーしよ…」


「…なにが???」