暗い部屋の中、
2人は抱き合って泣いていた。


必死にしがみついて、
話す余裕もなく、
とめどなく涙を流しあった。


傍から見れば、不思議な光景かもしれない。


友達同士の男が2人、
まるで恋人同士のように
抱き合って泣いているこの状況は
異様とすら言えると思う。


きっと、ナオくんだって
同じことを考えてるはずだ。


オレはそうでも、彼はゲイではない。


…はずだった。


ナオくんはたった今
同じ男の"友達同士"という壁に
初めてヒビを入れた。

いつもは顔が少しでも近いと叱るくせに、
今は体の距離すらない。

ずっと、頬が触れ合っている。

泣きすぎて熱を持った顔が
ナオくんの首に当たるたび、
優しく頭を撫でてくれた。

友達、ましてや親友に
こんなこと普通はするんやろうか。

いや、やっぱりハグすら稀やと思う。

でも何よりも、ナオくんは




オレのことを、

"好き"と言ったんだ。




「ヒイロ…、好きや」




何度も




「ほんまに、大好きやで、ヒイロ」




何度も




「ーーー離したくないのに」




ナオくんの大きな想いが
全身に降り掛かってきて

オレを、そっと包み込んだ。




「ナオくん…」




その想いに応えようと、

ナオくんの背中に回している腕に
たくさん力を込めた。




「オレも…、オレも、
ナオくんのことが 大好き」




ナオくんとの関係が親友でも、
それ以上でも、
オレの思いは変わらない。

むしろどんどん大きくなっていくだけ。

ぎゅっとナオくんのシャツを握って
高鳴った鼓動を感じていた。




「…ヒイロのそういう素直なとこ、好き」




ナオくんは俺の心臓の音には何も触れず、
鼻をすすりながら優しく笑ってくれた。

もう、ええんや。
勘違いでも、そうでなくても。

ナオくんがオレのことを、
好きやって言うてくれたから。

それでもう、ええ。

幸せやから。
何よりも幸せやから。




あと、4ヶ月…。




この幸せを感じることが出来るのは、

あと、たったの4ヶ月。




ナオくんのために、
卒業まで最高の親友でい続けよう。





親友ですらしないことでも、

オレは、ナオくんとならーーーーー