勉強会も終わり、山下はすぐにバイトへ。

オレは田口くんと二人、
静かな校門を出たところだった。





「腹減ったー。晩飯何食いたい?」


「んー、逆に田口くんは食べたいのないん?」


「肉やな。ガスポ行こ、ガスポ」


「あ、うん、全然ええよ」





適当に近くの繁華街へ向かい、
サラリーマンや女子高生など
様々な人々が道行く大通りを
呑気にだらだらと歩いた。


人が多いなぁ。

あんまりこういう都会的なところは苦手だ。


そんなことを思いながら数十メートル先の
ガスポへと足を運ぶ。

席を案内されて早々、
田口くんはオレにメニュー表を差し出した。




「おれ決まっとるから」


「そか、何にするん?」


「おれは、いつもこれ頼んでんねん」




それはステーキにグリルチキンに焼肉にハンバークという
なんとも豪快なスタミナセットだった。


彼は身長こそナオくんと同じくらいやけど、
肉付きは田口くんの方が細身。

いや…いつもこんな食べてそのスタイルでっか…。




「そ、その体でこれ全部食べきれるん…?」


「おれ、意外と鍛えてんで」


「えぇ…」




比較的、小食なオレは
とりあえずトマトチキングラタンを頼んでみた。

実は、友達とこうやって
外食をするということはほとんどなく、

たまに山下と二人でカフェに行って
勉強会してるぐらいだった。

相手が田口くんということもあり、
オレ、少し緊張気味。




しばらくすると、
熱々の料理が目前に運ばれてきた。


田口くんの頼んだスタミナセットからは

ジューッジューッ

という、熱された鉄板の上で
てんこ盛りの肉が焼ける音が聞こえる。




「ごっついボリューム!」


「せやろ、これめっちゃ満腹感やばいで」


「へぇぇーよく食べれるなぁww」




両者ともに、"いただきます"と手を合わせて
フォークを手に取った。

食事の最中、田口くんが
ステーキをナイフで切りながら
オレに問いかけてきた。




「てかさ、」


「ん?」


「佐野原と最近調子悪いやん」


「えっ…」




そうやけど。

そうやけど。


別に…ええやん…関係ないやん…。

って思ってしまったオレは
まだ田口くんを友達と思えてないんかなぁ…。

ナオくんの親友なのに、申し訳ない。




「今日、家行ってやったら喜ぶんちゃうか」


「えぇぇっ…そんな、いきなり…」


「お前から行ったことある?」


「…いつでも来て良いとは言われとるけど」




自然と手が止まるオレを見て
田口くんもフォークとナイフを置いた。




「お前らってさ、普通のトモダチちゃうやろ」




田口くんの言葉が頭に刺さって

思考が止まった。