そうしていく中で、
オレはナオくんの友達とも交流を持ち始める。

オレの唯一の友達、山下も含めて
一緒に下校することも増えてきた。

そんな状況に未だ慣れないオレは
新鮮な気持ちにいつも胸を躍らせて
それなりに楽しんでいる。



今日も今日とてナオくんと二人、
他愛もない話をしながら登校していた。

昇降口の目の前で偶然会ったのは、
寝癖ぼうぼうの山下だ。




「おーヒイロと佐野原。
最近お前ら一緒に来ること多いなぁ」


「家近いしなー。な、ヒイロ」


「うん、行きがけよく会うし」




ええなぁと呟きながら上履きを取り出す山下。

仲良しなことを実感させられて
なんだかくすぐったい気持ちになる。

自分も上履きを取ろうと
下駄箱に手を伸ばすと、




「うゎっ」




後ろから香水のきつい香りとともに
がっちりとした体に抱きつかれた。




「おれも仲良くしてほしーなぁー、ヒイロくん」


「たっ…田口くん、お、おはよ」


「おはよ、モテ男」





笑みを見せることなく、
真顔まましれっと頭を撫でて去っていく彼は

ナオくんと一番仲の良い、田口くん。

顔立ちが良く、女子からも男子からもモテモテで
ナオくん同様ちょっとワルな雰囲気を放つ男子だ。




びっっっ…くりした…。





最近、田口くんとも少しずつ関わりを持つようになって
学校内ですれ違うとき、オレを見かけるときはいつも
必ずと言っていい確率で声をかけてくる。

最初から距離感が近くて少し苦手なタイプやけど、
友達が増えたということに関しては良かったと思う。



ナオくん、田口くん、山下、オレ。



その他にも、それぞれの仲の良い友達とは
それなりに面識を持つようになり、

高校入って1年経った頃には
想像以上の人と知り合いになることができた。

オレ自身も、少しずつ周りの人と打ち解けていった。

初めてナオくんと話ができたときから、
オレは確実に成長していた。




ナオくんのおかげで、変わることができた。

生きる兆しが、見えてきたんだ。




一人やったけど、今はもう一人やないって

心からそう思える。





「ほんならまた後でな」


「うん、ナオくんも今日一日頑張ってな」


「おう、たぶんな」


「おいww」





ナオくんは笑って手を振りながら
少し先を歩いていた田口くんと肩を並べた。

ナオくんの後ろ姿はいつ見てもかっこいい。
どこから見てもかっこいいけど。


こうやって笑って話ができるだけで
オレは幸せもんやと思った。


いつまでもこんな日々を送っていたい。

なんて、儚い夢なんかな。



そんなことを考えながら、

今日も日差しの差し込む自分の席へと向かった。