「なっ、えっ、ちょ、ナオく…」


「このまま黙って聞け」


「………」





ナオくんの広い胸元に顔が蹲ったまま、
若干恐怖すら感じる低い声に耳を傾けた。

頭と背中に回された腕は
とても熱く、力強い。





「…ヒイロ」


「……う、うん?」





「ごめんな、傷つけて」





思いもよらない言葉に混乱しつつ、
オレの気持ちがバレていたのかと
激しく動揺してしまう。





「な、なんで」


「泣いてるんは俺のせいやろ。
俺が余計なこと言うてもうたから」


「…ちゃうよ」


「違わへん、だって
さっきも渡り廊下で泣いてたやん」


「違うってば!」



ドンッ





力を振り絞ってナオくんの体を引き離し、
怖くて地面ばかりを見つめていると
流れていた涙がポツポツとアスファルトを濡らした。





「…ヒイロ、」


「もう、やめて…こんなこと…」


「…なんで」


「だって、オレ…男、やのに」





涙で声が上ずりそうになるのを堪え、
直視できないナオくんの姿に向かって
"本当の気持ち"を零した。


その気持ちは、
これまでの色々な思いが詰め込まれていて
自分でもよくわからず、
毎日疑問に思っていることだった。


そんなことをナオくんにぶつけたって
何も解決せぇへんのに。


むしろ、困らせるだけーーーー






「アホお前、男でも親友ならハグくらいするわ」