オレはなんとも言えない複雑な思いを
無理やり押し殺し、
今日の遊びは断ろうと決心した。




「…あの子ね、中原さんっていう子やから。
もしなんか気になることとかあったら気軽に聞いて」


「ん、…おぅ、ありがとな」





不思議なことに、
ナオくんの気持ちが他の子にあると分かった途端
そのショックを紛らわそうとするためか
今まで全く仕事しなかった口が
ペラペラ開く。


分かりきっていたことでも、
いざそうと知ると



胸が痛くて痛くて、はちきれそうで、
今すぐ死にたいくらい、
つらくてしんどい。




「今日俺ん家くるやろ?」




そんな俺の気持ちなんて
何も知らないナオくん。
当たり前。

仕方ないと分かってはいるけど、
現実というものは残酷やわ。

ナオくんにとっては、ただの友達やもんな。
友達としては遊ぶのが普通かもしれん。

でも、オレはどうしても無理やから。




「あ…あぁ、うーん…やめとこ、かな…」


「え、」


「いや、…なんかやっぱり申し訳ないし」




声が少し震えた。

やっぱり、今日嬉しかったことは全部

オレの勘違いやったんやって。

そう思うと



必死で唇を噛んでるのに

勝手に涙がこみ上げた。




視界がぼやけ始めると、
バレないように下を向いて
一歩、また一歩と
足が勝手に小さな歩幅で退いていく。





「……ヒイロ?」


「ごめん、なんでもない、」


「ちょ、お前…」


「佐野原ーお前何しとんねん」





二人だけに流れていた時間を裂くように、
そろそろ見慣れてきたナオくんの友達が
駆け足で近づいてきた。


焦って瞼に付いている涙をジャージの袖で拭き取り、
何事もなかったような顔を作ってその場を待った。





「なんや田口」


「今日はハルキとお前ん家行く言うとったやんか」


「は? くるやつ増えたんかよ」


「優勝の打ち上げやねんから、しゃーないやん」


「や、でもーーー」




「ナオくん、」






つい口をついて名前を呼び、

驚いた表情でオレを見つめるナオくんに

今度はちゃんと笑って言葉を投げた。






「オレはええから、みんなで楽しんで!
赤組優勝おめでとー!」






「ありがとー!」と、ナオくんの友人が手を振る隣で
本人は固まったように表情を変えなかった。


せっかく、友達になれたと思ったのになぁ。
我慢すればずっと友達でいられたのに。


自分がわがまますぎて嫌になる。





教室までの廊下、

何度涙が頬を滑り落ちたか分からない。





現実が頭の中で繰り返される。




ナオくんにとってオレは、

ただの男友達。





それ以下はあっても、

それ以上はない。






だって、勝手に

二人で遊ぶとか勘違いしてしまって、

頭おかしいでオレ。







他にも今日遊ぶ人おるんやんか。


当たり前やん。


男やもん。


友達やもん。







オレと二人になりたいがために

ナオくんが遊び誘うわけないやんか。

友達少ないオレへの優しさやんか。






あかんもう、涙止まらへん。






勝手に勘違いして、

キモすぎるやろ自分。