遊ぶことを口実に、
電話番号とメールアドレスを交換した。



でも、それはオレの勇気じゃなくて
佐野原くんの神対応のおかげだ。




毎日身肌離さず持っているスマホの中に
佐野原くんにいつでも話しかけられる連絡先が入っている。




佐野原くんがいつも、手元にいるような感覚だ。




ガラケーからスマートフォンになってから
性能の高さに戸惑うことはたくさんあったけど、

はじめてその優れた機能に感謝してしまった。

連絡先を交換した時に
彼の名前がフルネームで自動的に表示されたのだ。





"佐野原 尚"


『そう、俺の名前"なお"やから』





ナオくん。



なんか、"ナオくん"って感じの顔やもんなぁ。

ぴったり。名前。なんか納得。




サノハラ、ナオくん。



かっこいい名前やなぁ。

似合うなぁ。

オレ、今後ナオくんって呼んでもええんかな。




さすがにまだ早いか。




でも下の名前教えてくれるってことは、

そういうことやったりせんかな。





スマホの自動機能でここまで悩まされるオレ。

スマホおそるべし。






ふと、そのあとの会話が思い出される。







『橋本…これなんて読むん? ヒ…?』


『あ…、ヒイロ。 橋本、陽彩』


『へぇーーー…』


『よ、読みにくい、よね…ごめん…』





『いや? んじゃ"ヒイロ"って呼ぶわ』





ナオくんの口から出た、オレの名前。

ためらうことなく、躊躇することなく

自然に発した、オレの名前。






『んじゃ"ヒイロ"って呼ぶわ』






頭の中で永遠と繰り返しループされる

ナオくんの言葉。




エコーまでかかってる気がする。





ねぇ、オレ

ナオくんって呼んでいいの?



気持ち悪くない?

下の名前で呼び合うってさ。



ナオくんはいいよ。

自然やから。




でもさ、なんか、

オレ、どうしても名前で呼ぶと

好きって気持ちが上乗せされてまうんよ。




もっともっと、好きになってしまうんよ。




オレこれ以上好きになったらもう、

耐えられへんねんけど。





ねえ、ナオくん。








ピコン…♪




【メール受信】



2010/06/14 23:49


From:佐野原 尚
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件名:うぃっす
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本文:


体育祭終わったら
そのまま俺ん家きて遊ぼ




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