「もう、新しい花は咲いてる。大丈夫。何度だって咲ける。もしも栄養が足りなければ俺が咲かせる。」
椿の頬に触れながらそういう海。
椿が目を開けるとそこには真剣な表情で自分の顔を見降ろす海の姿があった。

「俺、妻を亡くして・・・生きることがこんなにつらいって思わなかったんだ。そのくらいしんどくて生きる理由も見つからなかった。でも、今は椿。お前が俺の生きる理由だ。」

少し潤んだ瞳の海。
その瞳に覚悟が滲んで見えた椿は心からの微笑みを返した。


そして・・・

「私。もう大丈夫です。」
と海に伝える。
「あたりまえだ。」
と海も微笑んだ。

今まで見た椿の微笑みの中でこんなにもぎこちなさを感じないのは初めてで、海はその表情を目にやきつけた。