「椿はまだまだ成長途中だ。不器用に生きて、ほかの人よりはその成長が遅いのかもな。でも、ちゃんと根を張って、枝を伸ばして、確実に成長してる。」
椿も視線を椿の木に戻した。
「俺も凌駕も。そんな椿から伸びて来た枝にすっかりつかまってるぞ。」
海がちらり椿を見ると、椿の瞳からは涙が流れていた。
「ちゃんと、生きてる。根を張って、大きくなってる。きれいな花を咲かせてる。それだけの魅力があるから、俺たちはつかまったんだ。」
大きな手を伸ばし、海が椿の涙を拭う。

「きれいな花が落ちたあと、椿は実をつける。そしてその実から種をまく。だから、花が落ちても、それは次に成長するためのあくまで過程だ。」
海の大きな手のぬくもりを感じながら椿は目を閉じて話しを聞く。
「きれいな花が落ちても、また実をつけて種をまいて、芽が出て・・・ちゃんと繰り返し花は咲く。椿。何度だって咲けるんだよ。」
どんなにつらいことがあっても。どんなによどんだ色の花を咲かせても。また花が落ちて・・・新しい花が咲く。

「私・・まだ咲けるかな・・・」
椿から漏れた小さな声に海は顔を近づける。
そして椿に届くしっかりとした声で伝えた。