「俺も・・・心のどこかで、椿がいつか、ぽきっと心が壊れて、落ちるんじゃないかって怖かったんだ。危なげで、はかなげで怖かった。」
「・・・」
「でも。俺間違ってたな」
「・・・え?」
海が椿の方を見たまま優しく微笑む。
「お前は強いよ。ちゃんと自分の足で立って、歩いてる。」
椿が海から目をはなせないでいると、海は視線を真上に広がる椿の木に向けた。

「この椿。立派だな~」
「はい」
椿は普通は高さが5~6メートルだが、まれに20メートル近くなることもある。
椿と海が眺める椿は20メートル近く育った立派な木だった。
「椿って成長が遅くて、寿命が長いっていうだろ。」
「・・・はい」
「寒い冬に咲く椿もある。」
「・・・はい」
「やっぱりお前に似てるな。」
海がそう言って笑った。