「言いたいことのみこんだり、伝えたいことあきらめるの、遠慮するのやめます。」
はっきりと宣言する凌駕。

香菜もこうして強く芯を貫くことがあった。その時の表情にそっくりだ。

「俺、姉貴が亡くなってから、店長に遠慮してました。」
「・・・」
初めて聞く話に海が聞き入る。
「姉貴が死んだのは店長のせいじゃない。」
「・・」
「なのにいつまでも自分を責め続ける店長を放っておけませんでした。」
「・・・」
「俺の中で生きている姉貴が言うんです。」
海は凌駕の真剣な目を見る。
「店長をよろしくって。」
その言葉に海は少し泣きそうだった。

香菜は死んだ。でも、香菜は誰かの中で生き続けているのかもしれない。
少なくともそれは自分の中じゃない。

孤独な自分を支えるように、こうしてほかの誰かの中に生き続ける香菜が時々姿を見せているような気がした。