「椿ちゃんが無事で本当によかった。」
凌駕が椿の頭に手を触れる。
顔を引きつらせながら微笑む椿。

3人はその時、それぞれに違ったことを考えていた。

海は、凌駕が椿に触れた瞬間、胸がチクリと痛んだ。
気のせいじゃないとわかってはいても、気づかないふりをして少し目をそらした。

凌駕は海には抱きしめられて、そのまま眠るくらい心を許している椿が、自分が触れると体に力を入れて緊張するのに気が付いていた。
その違いは何なんだろうかと考えようとする気持ちを止める。
目の前にいる椿を失いたくない。あきらめたくない。
そのためには気づかないふりをしたり、考えないようにすることが必要だ・・・。

椿は、凌駕と海の気持ちに感謝をしながらこのままではいけないと思っていた。
変わるためにできること。やらなくてはならないこと。
その一歩を踏み出すために、まずは時間が必要だとも思っていた。
ひとりの時間が・・・。