「ここのタルト、大好きなんです。もともとタルトが好きでしたけど、こんなにおいしいタルトに巡り会えたのは久しぶりで驚きました」

男性の言葉に、ケーキ屋の店員さんは嬉しそうに笑い、お茶をしに来たマダムたちは「私たちもタルトにしようかしら」と話している。私は慌てて口を開いた。

「あ、あの!ずっと見ちゃっててすみませんでした!タルト、とってもおいしいです!!」

突然のことに頭が追いつかず、本当はもっと違うことを言いたかったのに出てきたのはこれだけだった。

男性がタルトを手に帰ってしまった後でも、私の胸の高鳴りは止まなかった。



私は次にあった時色々話せたらいいな、と思いながら今日も仕事をする。後輩たちからは「何かいいことあったんですか?」と聞かれたりもした。

仕事を頑張りつつ、タルトのことも調べてみた。お菓子の歴史なんて今まで調べたことがなく、ちょっと驚いた。

タルトのもともとの発祥は、古代ローマ時代に作られたトールタと呼ばれるお菓子にルーツがあるらしい。そして、フランスのタルトであるタルト・タタンの発祥は面白かった。